削る量は最小限に抑えた虫歯治療 MI(Minimal Intervention)
健康な歯を可能な限り維持し、虫歯を管理するという考え方で、虫歯治療における「最小の侵襲」という見方もあります。
2000年FDI(国際歯科連盟)において、窩洞形成に至らないう蝕(歯が欠けていない虫歯)は再石灰化により治癒が可能であることに基づき、それまでの虫歯処置の見直しを提言しました。具体的に言うと、インレーなどの詰め物にするときなどに予防的に虫歯で無いところも削ることがあります。それは近年の虫歯の科学的知見や歯科用材料の進歩によって、不要となったと考えられるようになったからです。
その見直した内容は、以下の通りです。
- Modification of the oral flora:口腔内細菌叢の変容
- Patient education:患者教育
- Remineralisation of non-cavitated lesions of enamel and dentine:エナメル質及び象牙質における非う窩性病変の再石灰化
- Minimal operative intervention of cavitated lesions:う窩性病変への最小の侵襲による修復処置
- Repair of defective restorations:不良修復物のリペア
この5項目ですが、少し専門的であると思います。
噛み砕いて説明しますと、虫歯の進行を予防することの方が、歯を削ることよりも優先されます。虫歯治療で削るにしても、削る量は最小限にしましょう。できの悪い治療は再びやり直しましょう。このような内容になっております。
訪問診療で口腔細菌の量(細菌の種類を特定するものではありません)を測定することは保険適応となりましたが、外来では口腔内細菌叢の検査は保険適応外となっております。
コンポジットレジンという歯科用材料は各歯科メーカーが開発に力を入れており、より良い材料が手に入るようになってきております。
虫歯の重症化予防も重要です。
歯の神経が死ぬことで痛みがなくなります。痛みがなくなったことで放置すると歯根の先で虫歯菌が炎症を起こし化膿します。化膿すると腫れや痛みが再発することがあります。ひどくなると、蜂窩織炎なども起こす可能性があります。細菌が血液を介して全身に広がり菌血症を起こすこともあります。このような場合は、大学病院か地方病院で、抗菌薬の点滴治療が必要になることもあり、患者さんの負担は大きくなります。
精密で、無菌的な根管治療
虫歯が進行しすぎた場合、歯を残す治療法として考えられるのが「根管治療」です。根管治療は、歯の神経が入っていた部分(根管)を専用の器具を使い、きれいに洗浄し、薬を詰め、土台を立て、被せ物を被せます。根管は木の根っこのように複雑に張りめぐらされており、人によって形が違います。そのため根管治療を成功させるために必要なのは、ミクロン単位の精密な技術で、一般的な歯科治療よりも、ずっと細かな作業が必要です。
歯髄と呼ばれる神経組織を含む部位に対する処置であり、神経組織は他の組織と比べて、細菌感染に弱く、使用する器具や術野に対して、きちんと感染制御がなされる必要があります。当院では、ヨーロッパ規格のMELAG社製の洗浄、消毒、滅菌設備を導入しており、患者さんにご安心していただけるように配慮しております。
外科的歯内療法(外科的な根管治療)を併用すると歯を残せる可能性は高くなります。ただ、現状、保険適応されていないですが、海外では有効性が確認されている材料を使用するため、自由診療となっております。
歯周病の治療と予防に力を入れています
日本人の歯を失う原因で最も多いのは虫歯ではなく歯周病が40%を占めます。そのため歯周病にならないことが生涯にわたって歯を残す重要なポイントです。しかし歯周病は自覚症状がほとんどなく、気づいた時は進行している場合が多いのです。
歯周病になると歯槽骨(歯の周りの歯を支える骨)を溶かします。歯周病で失われた歯槽骨のレベルは一度失われると自然に回復はしません。重度になると歯もグラグラになり、放置し続けることで歯が抜け落ちてしまいます。
現在、失われた歯周組織を再生させる治療方法は盛んに研究されています。近年、保険適応でも歯周組織再生療法を行えるようになりました。保険診療だと適応は限定されますが、自由診療であれば、適応は広くなり、歯を残せる可能性が出てきます。
咬み合わせ治療
咬み合わせを診ることは、下顎の位置決めから始まります。顎関節症の有無などの診査・安静時の下顎の位置、上下の歯を咬み合わせたときの位置など下顔面全体を診てから、一つ一つの歯の位置の診査を行います。
具体的には、過剰な力がかからないようにマウスピースを作ったり、顎関節症のスプリント治療や開口訓練、フルマウスのブリッジ、歯を失ったところに隣の歯が傾いてきた場合、矯正で整直させる限局的な矯正、歯を牽引して歯を引っ張り上げたり、親知らずを抜歯して歯がないところに移植したり(条件付きで保険適応)と咬み合わせを回復させる方法は、一般的な保険診療の方法以外にもあります。